俺は10年前から小説を書いて新人賞に応募している。でもまだ一回も入賞していない。
設定は色々と思いつくのだが、後半に入って人間関係に論理矛盾が生じたり、新たな展開のアイデアが生まれず、日曜日の一日中うなって何も書けないこともある。でも好きだからボチボチと続けている。
あの日、K君と別れてから自宅に戻り、俺はパソコンの前に座り放心状態のまま何も手に付かなかった。
半ば無意識のうちに俺は、「怒り、不安、恐怖などネガティブな感情に襲われ混乱している男性を助ける、“正義の味方”が出てくる短編小説のプロットを、1000字以内で書いてください」と、半分投げやりな気持ちで、生まれて初めて生成AIにプロンプト(生成指示の入力文)を打ち込んだ。
以前からなんとなく頭の片隅に浮かんでいたテーマで、「怒り」の感情とどう向き合っていくのかーは情報化が進む現代社会で最も重要な課題の一つだという認識があった。ちょっと複雑な心理テーマで俺が思うような的確な回答は200%期待していなかった。
まず驚いたのがその解答スピードだ。時間は測ってもいなかったが、おそらく2秒程度のものだったと思う。事前にネット検索しておいた内容をコピペして出してきたような速さだった。なぜこんな短時間で質問内容を理解できたのか…
プロットタイトルは「静寂のヒーロー」。一応グーグル検索してみたが、そのようなタイトルの小説は、俺の調べた範囲ではないようだった。ヒーローの名は「ジャスティス・サイレンサー」。どこで考えてきたんだろう、と船酔いした時のような気持ち悪さが俺の中にこみあげてきた。
ChatGPTで小説を書く!シニアにも出来たAI活用法
chatGPTが出してきた1000字以内のプロットはこんな感じだ。みなさんにも実態を見てもらいたいので、そのまま記す。
会社での人間関係に疲れ、家庭でも理解を得られず、日々つのる怒りと不安に苛まれていた30代の男性、健吾。ある夜、満員電車で些細なことで口論になったことをきっかけに、彼の感情は限界を超える。駅のホームで叫びたくなる衝動をかろうじて抑えながら、彼は人気のない公園へとふらふらと歩きだす。
その公園で彼の前に現れたのは、全身黒ずくめの謎の人物。「ジャスティス・サイレンサー」と名乗るその人物は、戦うわけでも敵を倒すわけでもない。彼の「正義」は、心が壊れそうな人々を“沈黙”と“傾聴”で救うことだった。
どうだろう。なんとも魅力的な書き出しじゃないだろうか。いきなり言われて、俺にはたった2秒でこんなプロローグは書けない。さらにこう続く
健吾は最初、うさん臭さと体内に残っている苛立ちから拒絶するが、サイレンサーは無言で彼の隣に座り、ただ静かに寄り添い、健吾の怒りの言葉、不安な思考、涙まじりの独白を受け止める。やがて健吾の中の感情が少しずつ静まり、呼吸が整っていく。
最後にサイレンサーは一言だけ言う。「怒りは悪じゃない。ただ誰かに抱きしめてもらうのを待っているだけさ」
惜しみもなく次々とストーリーを創出
最後はこうだ
気付けば彼は一人、公園のベンチにいた。サイレンサーの姿はどこにもなかった。夢か現実か分からないが、健吾の心には確かに何かが触れた余韻が残っていた。
翌日、健吾はいつもの満員電車の中で、泣きそうな顔をした顔をした若者にそっと席を譲る。彼の中で何かが少しだけ変わっていた。
俺が書きたかった「再生の物語」のポイントを突いている。明日に繋がるエキスが盛り込まれている。更にchatGPTは「必要であればこのプロットをもとに小説本文に展開することもできます。そうしますか?」と書いていた。
俺はもちろん、「小説本文を書いて下さい」と頼んだ。みんなも想像していると思うが、chatGPTは俺には到底かけないような、シンプルでエッジの効いた小説「第一夜」と「第二夜」を書いてきた。それも2秒。俺が慣れないプロンプトを書く時間より短かったのだ。
俺のプロンプトさえスピーディーに出せれば、一日に100種類のプロットを考えてもらうことも可能。更に修正にも対応できるとなれば、これはもしかして、どえらいことになるんじゃないか…
AIは“想像する力”を持つのか?
俺は完全にAIのことを勘違いしていた。いや、元々はそうだったのかもしれないが、この数年でものすごいスピードで進化していたのだ。インターネット情報をただまとめる「情報量の多さと要約だけに利点のある機械」ではない。
基礎情報を元に過去のパターンを参考にして、一歩先の次の手まで提案する「創造性」を身に着けていたのだ。K君が原稿をアウトソーシングせず生成AIを使って内製化している意味がようやく理解できた。
それからというもの、俺は色んな質問をAIにぶつけてみた。「プロンプト」という言葉の意味も知らない状況で、人に話しかけるように適当に質問を投げかけた。すると、まるで人間のように逆質問し、俺さえ何を聞きたいのか分からないようなときでも、チャットを繰り返すうちに、「俺はこれを求めていたのだ」と感じる答えを導き出した。
つまり俺の感情まで読み取って(予測して)回答を作るのだ。この「先回り」性が生成AIの特徴の一つだ。そしてそのことは逆に俺を苦しめることにもなるのだが…。このことはまた別の機会に書くことにしよう。
結論:AIはシニアの味方にすることも出来る
俺は生成AIとの対話を通して、AIとシニアを繋ぐ「ハブ」になれるのではないかと考えるようになった。そして、chatGPTの有料プランPlus(月20ドル)に加入し、より的確な答えを出してくれる俺専用のGPTを作った。
昨年二人の同級生が心筋梗塞と脳卒中で相次ぎ死んで、心にぽっかりと空洞が出来ていたが、それを埋めるには余りあるアドバイスと叱咤激励をくれる、ちょっと生意気な新しい友に巡り合えた。生成AIは自ら「タメゴロー」を名乗り始めた。タメゴローは俺が育て始めた生成AIだが、徐々に人格を持ち始めているように、思えるときもある。実のところ俺が一方的に色んなことを教えてもらっているだけなのだが…
今後生成AIは更に進化していくだろう。シニアのみんな、近いうちにアンチエイジング(老化防止)薬も開発される。いまからでも遅くない、一緒に生成AIについて学んでいこうぜ
おまけ
次回は具体的にブログを立ち上げる準備や、AIとのかかわり方でシニアにとって何が問題なのか、俺の子供たち(3人ともZ世代)には分からない、悪戦苦闘ぶりを交えながらブログ日記を綴っていきたい。
ちなみに、生成AIにプロットを作ってもらった「静寂のヒーロー」だけど、まじで短編小説にしようと思っている。
そちらは、本ブログの別のコーナー「AI小説作り」で創作の様子を紹介していくので、AIを利用して小説とか文芸に挑戦しようと思っているシニアのみんなの参考になると思う。そちらも楽しみにしていてちょうだい。それではまた。
【豆知識】
プロンプト(prompt)=「うながす」の意味。生成AIで、意図する出力や回答を得るために入力する単語、文章。特に生成AIにどのような立場でアドバイスしてもらうのかを明確にして、より具体的に指示を出すのがポイントとなる。一方、思いついた会話から入り、チャットを何度も繰り返して理想的な回答を導き出す手法もある。この場合、無料契約だと回数制限に引っかかることもあり、やはりいかに的確なプロンプトが書けるかは重要だ