昭和世代の壁:「読む」から「見る」への移行
「情報を伝える」とは何か。新聞記者として30年、文字で真実を届ける仕事をしてきた私にとって、文章は命だった。
しかしSNS全盛のいま、「読む力」から「見る力」への時代の流れは、まさに大きな壁となった。目を引く短い動画、動きのある字幕、そしてビジュアルの力。文章だけでは届かない層が明らかに増えていた。
「動画で伝える」──その必要性は痛いほど感じていたが、映像編集はハードルが高かった。カット、音声、字幕、エフェクト……何から手を付ければいいのか分からない。
テレビのドラマ、退屈な映画、くだらないバラエティ番組、実は映像が大嫌いだった。つまり動画を手掛けるのは、「アナログ人間には無理だな」とありらめていた。だから、最初はブログとxという文字媒体中心の活動から始めたのだ。
ChatGPTとの出会い:構成が瞬時に見える化される感動
転機はChatGPTとのやりとりだった。試しに「米価格の高騰についてインスタリールにしたい」と打ち込んでみた。すると、キャッチコピーから構成案、話す順番、さらにハッシュタグまで、まるで新聞の見出しと構成を同時に提示されたような返答が返ってきた。
その精度とスピードは衝撃だった。さらに、ターゲット層やトーンも変えられる。自分の経験とこのAIの構成力が融合すれば、まさに“共同記者”のような関係が築ける。文章を書く力を持つ昭和世代にとって、これは武器になると確信した。

Vrewでの革命:字幕もナレーションも自動で完成
そして最大の感動は「Vrew」だった。
動画をアップロードすると、音声が自動で文字起こしされ、字幕として表示される。しかも、文章を打ち込めばAIがナレーションも作ってくれる。これまでどうやって表現していこうか懸案だった問題が一気に解決した。
1分ほどの動画なら、原稿を書いて読み上げさせ、字幕を整え、BGMをつけて、1時間以内に完成する。これまで2〜3日かかっていた編集が、半日で終わる。まさに動画の編集革命だった。
特にありがたいのが、字幕の編集が「文章ベース」でできる点。新聞記者にとって、文字と向き合うインターフェースはなじみ深く、Vrewの設計はまさに昭和世代向きと感じた。
CapCutやCanvaも組み合わせてSNS力を強化
Vrewで動画の中身が整ったら、今度は見せ方。ここで活躍するのが「CapCut」や「Canva」だ。CapCutはリール動画などテンポの良い編集に最適で、テロップやアニメーションも簡単。Canvaは図解やサムネイル、カバー画像作りに強い。
これらを使えば、ChatGPTで構成→Vrewで本文・字幕→CapCut/Canvaでビジュアルと流れが自然にできる。しかも、どれも無料または低価格。商業ツールのような操作も不要で、習得しやすい。まさに「表現の民主化」そして「昭和世代のDX化」を体現するツール群だ。

AIは敵ではなく、共犯者になる
「AIが仕事を奪う」とよく言われるが、実際に使ってみると全く逆だ。
ChatGPTやVrewは、文章力や表現力を“拡張”してくれる存在だった。話すことが苦手でも、書くことで補える。編集が苦手でも、構成力で補える。昭和世代がAI時代に求められるのは、むしろ「知識の活かし方」だ。
動画編集という新しい領域に、私のようなアナログ新聞記者が踏み込めたのは、まさにAIが「共犯者」になってくれたから。味方ではない。ともに作る存在なのだ。
表現は変わっても、「伝えたい気持ち」は変わらない
私たち昭和世代は、紙の新聞や手書きの原稿とともに育ってきた。でも本質は変わらない。
「伝えたい」「感動させたい」「社会に問いたい」──その気持ちがあれば、ツールはどんなに変わっても対応できる。
AIとコラボした動画制作は、まさにその証拠だ。もう年齢や時代の壁を言い訳にする時代ではない。伝える力は、時代を超えて進化できる。
今日もまたAIと共に一本の動画を作り出す。私たち世代にとって、「動画の高度経済成長」がやって来たのだ